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とうへんぼくで、ばかったれ*朝倉かすみ

  • 2012/06/19(火) 17:06:15

とうへんぼくで、ばかったれとうへんぼくで、ばかったれ
(2012/05/22)
朝倉 かすみ

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札幌のデパートに勤務する吉田は、中年の男性にひとめぼれしました。あとは、まっしぐらです。張り込み、尾行と地道な活動で情報収集をはかり、やがて男を追いかけ上京、拠点を池袋周辺に移します。ストーカー?いえ、違います。「会いたい」と「知りたい」と「欲しい」で胸がいっぱい、男のことを、ただ「好き」なだけです。問題は、男が吉田の存在すら知らない、ということ―。


ひと目会ったその日から、その人のことが頭から離れなくて――というか、その人に魂がくっついて行ってしまったかのようになって――寝ても覚めてもその人その人、となってしまう吉田であった。その人の名は、エノマタさん。取り立ててどうということのない、職場では影が薄いと言われる独身四十男である。だが、仕方がないのである。恋なのだから。彼のことは何から何まで知りたくて、こっそりあとをつけてみたり、行動を見張ってしまったりするのも、決してストーカーなどではないのである。恋なのだから。彼の転居とともに引っ越してしまうあたりの行動力には少々驚かされるが、そうまでしても知りたいのである。恋なのだから。片思いの切なさとこの上ない幸福感が見事に描かれていて惹きこまれる。この物語の、恋が実るまでの張りつめた幸福感が好きである。実った後の幸福は、もはやつけたしのようなものであると言ってしまいたくなる。吉田を応援したくなる一冊である。

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