七夜物語 上下*川上弘美

  • 2012/07/26(木) 20:13:58

七夜物語(上)七夜物語(上)
(2012/05/18)
川上弘美

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小学校四年生のさよは、母親と二人暮らし。離婚した父とは、以来、会っていない。ある日、町の図書館で『七夜物語』という不思議な本にふれ、物語世界に導かれたかように、同級生の仄田くんと共に『七夜物語』の世界へと迷い込んでゆく。大ネズミ・グリクレルとの出会い、眠りの誘惑、若かりし両親、うつくしいこどもたち、生まれたばかりのちびエンピツ、光と影との戦い……七つの夜をくぐりぬけた二人の冒険の行く先は? 著者初の長編ファンタジー。
新聞連載時に好評だった酒井駒子さんの挿絵250点以上を収録!


「しちや」かと思っていたら「ななよ」だった。同じクラスの少年と少女が物語の中の七つの夜を旅するお話である。上巻は、五日目の夜が始まるところまで。はじめは起こることを受け止めることばかりに気を取られていた二人だったが、次第に周囲のことや人の気持ちを考えながら夜の国へ赴くようになっていく。過去を振り返り、未来の方向に手をかざし、あれこれと考えをめぐらせて少しずつ思慮深さを身に着けていく様子が好ましい。物語の内容は違うが、ミヒャエル・エンデの『モモ』と似たテイストのファンタジーな一冊である。

七夜物語(下)七夜物語(下)
(2012/05/18)
川上弘美

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いま夜が明ける。二人で過ごしたかけがえのない時間は―。深い幸福感と、かすかなせつなさに包まれる会心の長編ファンタジー。


五日目の夜から夜が明けて元の世界(?)に帰り、十数年経ってそのときのことを振り返るまでが下巻である。児童書のように教訓的な出来事が次から次へとさよと仄田くんの身に起こり、二人は知恵を絞ってそのたびにくぐり抜けて元の世界へ帰ってくるのだが、少しもお説教臭くなく、彼らと一緒に考え応援したい心持ちにさせられるのは著者の巧みさだろうか。二人にとって、元の世界――と言ってしまっていいのか少し戸惑うが――での物事の見え方がずいぶん変わったのではないだろうか。そして最後に配された十数年後の回想では、なんとくるりとめぐって輪になっているのだ。なんて素敵な一冊なのだろう。

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