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雪と珊瑚と*梨木香歩

  • 2012/08/05(日) 14:14:13

雪と珊瑚と雪と珊瑚と
(2012/04/28)
梨木 香歩

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珊瑚、21歳。生まれたばかりの子ども。明日生きていくのに必要なお金。追い詰められた状況で、一人の女性と出逢い、滋味ある言葉、温かいスープに、生きる力が息を吹きかえしてゆく―。


タイトルからは全く想像できない物語だった。そして、少し読み進めると、まだ年若いシングルマザーの珊瑚が雪という赤ん坊を抱えて、やっていけそうもなくなったときにひとりの女性と出会い、勇気をもらって人生を切り開いていく物語なのだろう、と思った。もっと読み進むと、それは大きく違ってはいなかったが、それだけの薄っぺらなものではなかった。物語には幾人かの女性が出てくるが――もちろん男性も出てくるが――それぞれがしっかりとしたキャラクターで、読者は誰かしらに自分を重ねることができるのではないだろうか。珊瑚にとって彼女たちは、いつも甘いことを言ってくれるとは限らず、時には苦く、触れてほしくないところを抉られるようなこともある。それでもそのことを通して珊瑚は自分自身を再発見することができるのである。ともすると宗教がかってしまいがちなテーマを、人が生きていくことの根源として描き切っているところが素晴らしい。丁寧に心を込めて料理を作りたくなる一冊でもある。

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