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相田家のグッドバイ*森博嗣

  • 2012/09/16(日) 16:38:50

相田家のグッドバイ相田家のグッドバイ
(2012/02/24)
森 博嗣

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普通の家庭だったけれど、ちょっと変わった両親。
最後に息子がしたことは破壊か、それとも供養だったのか?

彼の母の第一の特徴は、ものを整理して収納することだった。それくらいのこと、綺麗好き整頓好きなら誰でもする。が、彼女の場合、完全に度を越していた。母は、父と結婚して以来、燃えるゴミ以外のゴミを一度も出したことがない。たとえば瓶、プラスティックの容器、ビニルの袋、空き箱、缶、紐に至るまでけっして捨てない。きちんと分別をし収納した。包装紙はテープを取りアイロンをかけて皺を伸ばし正確に折り畳み、輪ゴム一本でさえ太さ別にそれぞれ仕舞った。空き箱の蓋を開けると少し小さい箱が中に収まっていて、その蓋を取るとさらに小さな箱が幾重にも現われた。円筒形のお茶や海苔の缶も同様。家の至るところにそういったものが高密度で収納されていた。七歳年長の無口な父はときどき「こんなものは捨てれば良い」と言ったが、基本的に妻の収納癖に感心していた。平凡な家庭の、60年に及ぶ、ちょっと変わった秘密と真実とは? 森博嗣の家族小説!


小説というよりも、家族史とでも呼びたいような淡々とした調子で終始する一冊である。そしてこれは、親類縁者との付き合いが希薄で、語り手である相田家の息子・紀彦の祖父母とさえ頻繁に交流を持たなかった相田家の在り方の特徴と、両親の考え方によるところが大きいのだろうとも思われる。そうした生い立ちの中から、紀彦自身が感じ、学び取り、考えて自らの自立やその後の生活に役立てようとした様子は、一見薄情のようにも見えて、実のところは両親の影響力が強く及んでいる証しでもありそうだ。ひとりの人間の生き方の模索であり、親離れ、子離れの一例でもあり、連綿と続いてゆく家族の形の在りようということをも考えさせられる一冊でもある。

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