転がる空に雨は降らない*小野寺史宜

  • 2012/09/19(水) 17:04:27

転がる空に雨は降らない転がる空に雨は降らない
(2012/07/20)
小野寺 史宜

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「パパ、思いっきり蹴ってみて!」と息子は言った。もしもあの日に戻れるなら、おれは何だってするだろう。ミスキックが奪った、ふたつの生命。誰かのせいに、できればいいのに――。ベテランGKの「被害者の父」は、後悔に押しつぶされ堕落する。プロになった「加害者の息子」は、もっとがんばってくれと、願う。いつか試合でぶつかりあうために。残された者たちの祈りが導いた、ささやかだけど美しい、運命と奇跡の物語。


一瞬の行動が運命を左右する。その一瞬に戻れたら、と渇望しても決してそれは叶わない。ボールを追って公園から飛び出してきた子ども、たまたま通りかかった車。たったそれだけのことだったのに、その一瞬から関係者全員の運命が決定的に変わってしまった。法的な加害者ははっきりしているが、実際には関係する誰もが被害者のように思われてならない。幾人もの人々の一生が、その一瞬の前に戻ることがないという残酷さが胸に重く迫ってくる。サッカーというスポーツに絡めて、それぞれの葛藤と苦しみが丁寧に描かれていて好ましい。重い物語だが、爽やかさも明日への希望も垣間見られて、じんと胸を打つ一冊である。

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