ふくわらい*西加奈子

  • 2012/10/03(水) 13:12:33

ふくわらいふくわらい
(2012/08/07)
西加奈子

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マルキ・ド・サドをもじって名づけられた、書籍編集者の鳴木戸定。
彼女は幼い頃、紀行作家の父に連れられていった旅先で、誰もが目を覆うような特異な体験をした。
その時から、定は、世間と自分を隔てる壁を強く意識するようになる。
日常を機械的に送る定だったが、ある日、心の奥底にしまいこんでいた、自分でも忘れていたはずの思いに気づいてしまう。
その瞬間、彼女の心の壁は崩れ去り、熱い思いが止めどなく溢れ出すのだった――。


上記の紹介文のように、幼いころに特殊な体験をしたことが定(サダ)の人となりにかなりの影響を及ぼしたことは確かだとは思うが、それ以前に、生まれ持った感性がすでに周りの子どもとはひと味違っていたからこその彼女であっただろうと思うのである。興味のツボというのか、揺り動かされる点が、それはもう独特である。長じて編集者になった――どうして採用されたのか不思議でもあるが、それは置いておくとして――定だが、担当作家に真剣に寄り添おうとする定に、癖のある作家もいつしか心を開き、定もただならぬ影響を受けてゆく。思えば定という女性は、拒否するということをしないのだなぁ。儀礼的でなく、丸ごと相手のすべてをまず受け入れ、自分の中に取り込んで彼女なりに咀嚼しようとするのである。なかなかできないことだが、それを自然としてしまうのが定の特徴なのである。それでいて、自分というものを失くさずにいるのも定ならばこそだろう。社会では生きにくいかもしれないが、いつの間にか社会の方が歩み寄ってきそうにも思え、ふふふ、と笑いたくなる一冊である。

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