ことり*小川洋子

  • 2013/01/15(火) 17:07:36

ことりことり
(2012/11/07)
小川 洋子

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12年ぶり、待望の書き下ろし長編小説。
親や他人とは会話ができないけれど、小鳥のさえずりはよく理解する兄、
そして彼の言葉をただ一人世の中でわかるのは弟だけだ。
小鳥たちは兄弟の前で、競って歌を披露し、息継ぎを惜しむくらいに、一所懸命歌った。
兄はあらゆる医療的な試みにもかかわらず、人間の言葉を話せない。
青空薬局で棒つきキャンディーを買って、その包み紙で小鳥ブローチをつくって過ごす。
やがて両親は死に、兄は幼稚園の鳥小屋を見学しながら、そのさえずりを聴く。
弟は働きながら、夜はラジオに耳を傾ける。
静かで、温かな二人の生活が続いた。小さな、ひたむきな幸せ……。
そして時は過ぎゆき、兄は亡くなり、 弟は図書館司書との淡い恋、鈴虫を小箱に入れて持ち歩く老人、文鳥の耳飾りの少女と出会いながら、「小鳥の小父さん」になってゆく。
世の片隅で、小鳥たちの声だけに耳を澄ます兄弟のつつしみ深い一生が、やさしくせつない会心作。


人知れずひっそりと――鳥籠を両腕で抱くように――亡くなっていた「小鳥の小父さん」の描写で物語は静かに幕を開ける。その後に続くのは、5歳のときから、家族と暮らし、ポーポー語と彼が名づけた言葉でしか話さない七歳年上のお兄さんと暮らし、小鳥の小父さんと呼ばれるようになり、静かであたたかな生を終えるその日までのあれこれが、丁寧に語られているのである。それは、お兄さんが毎週水曜日に決まって買っていたポーポーキャンディーの包み紙を、一枚一枚根気よく糊付けして作った小鳥のブローチのように、さまざまな色の層が重なり合ってできたひとつの形のようにも思われる。こんなしあわせの形があってもいいな、と一抹の寂しさ哀しさとともに、ほっと安堵の息をつくような一冊である。

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