起終点駅(ターミナル)*桜木柴乃

  • 2013/02/01(金) 21:44:11

起終点駅(ターミナル)起終点駅(ターミナル)
(2012/04/16)
桜木 紫乃

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生きて行きさえすれば、いいことがある。

笹野真理子が函館の神父・角田吾朗から「竹原基樹の納骨式に出席してほしい」という手紙を受け取ったのは、先月のことだった。十年前、国内最大手の化粧品会社華清堂で幹部を約束されていた竹原は、突然会社を辞め、東京を引き払った。当時深い仲だった真理子には、何の説明もなかった。竹原は、自分が亡くなったあとのために戸籍謄本を、三ヶ月ごとに取り直しながら暮らしていたという――(「かたちないもの」)。
道報新聞釧路支社の新人記者・山岸里和は、釧路西港の防波堤で石崎という男と知り合う。石崎は六十歳の一人暮らし、現在失業中だという。「西港防波堤で釣り人転落死」の一報が入ったのは、九月初めのことだった。亡くなったのは和田博嗣、六十歳。住んでいたアパートのちゃぶ台には、里和の名刺が置かれていた――(海鳥の行方」)。
雑誌「STORY BOX」掲載した全六話で構成予定です。


表題作のほか、「かたちないもの」 「海鳥の行方」 「スクラップ・ロード」 「たたかいにやぶれて咲けよ」 「潮風の家」

生と死を扱っているせいもあり、舞台が北の地であるということもあるのかもしれないが、全体に雨雲が厚く垂れ込める空模様のような雰囲気である。決してカラッと明るくはないし、元気いっぱいでもない。それでも後ろ向きな感じではなく、それなりに一歩ずつでも前に進んで行こうという気持ちが感じられて、読後感は存外重苦しくはない。入場行進のようにはつらつと進まなくても、たとえすり足でも前を向く気持ちに生かされているのだと思わせてくれる一冊である。

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