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十二単衣を着た悪魔*内館牧子

  • 2013/02/12(火) 13:14:22

十二単衣を着た悪魔十二単衣を着た悪魔
(2012/05/11)
内館 牧子

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日本では、千年前から男は情けなく、そして女は強かだった……。
本家本元よりもリアルで面白い、もう一つの『源氏物語』

就職試験を五十八社続けて落ち、彼女にも振られた二流大学出身の雷。そんな時、弟の水が京大医学部に現役合格したとの知らせが入る。水は容姿端麗、頭脳明晰、しかもいい奴と、非の打ち所がない。雷はアルバイトで「源氏物語」の世界を模したイベントの設営を終え、足取り重く家に帰ろうとするが、突然巨大な火の玉に教われる。気が付けば、なんとそこは「源氏物語」の世界だった。
雷は、アルバイト先で配られた『源氏物語』のあらすじ本を持っていたため、次々と未来を予測し、比類なき陰陽師として、その世界で自分の存在価値を見出す事に成功する。光源氏という超一流の弟を持ち、いつもその栄光の影に隠れてしまう凡人の帝に己を重ねた雷は、帝に肩入れするようになるが、その母親・弘徽殿女御は、現代のキャリアウーマン顔負けの強さと野心を持っていて……。
人間の本質を描き続けてきた内館牧子が描く、本家本元よりも面白い、もう一つの「源氏物語」。


タイムトリップ物は数々あるが、これほど唐突に、似合わない時代にトリップすることもそうないのではないだろうか。何ひとつといっていいほど取り柄のない就職浪人ほぼ決定の覇気のない若者が飛び込むには、平安時代はあまりにも別世界である。だが、郷に入れば郷に従え、成せば成る、などさまざまなことわざが思い浮かぶが、必死になれば何とかなり、あまつさえ重用されてしまったりさえするのである。しかも雷の頼りは、トリップする前の派遣仕事先でもらった薬のサンプルと源氏物語のあらすじ本のみ。運には見放されなかったということだろうか。タイムトリップの定石で、歴史を変えることはなくとも、関係した人々の心に何かを残したことは確かだろう。そして、二十六年の源氏物語世界暮らしで雷の得たものは計り知れない。設定は無茶苦茶だが、共感するところは多い一冊である。

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