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役たたず、*石田千

  • 2013/04/03(水) 16:55:01

役たたず、 (光文社新書)役たたず、 (光文社新書)
(2013/03/15)
石田 千

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だいじなことは、役にたたない。そして一見、役にたっているようにみえるものも、ひと皮むけば役たたず。役にたつことばかりしていると、暮らしも人も、痩せていく―。古風な下町感覚の文章を書きファンの多いエッセイストで、ここ最近は小説家としても頭角を現している石田千が、日常のなかで綴った「役たたず」の視点からの風景。二年あまりにわたる連載の途中では、大震災が起き、そのときの空気感も文章としてリアルに切り取られている。相撲好き、競馬好き、ビール好きの「町内一のへそまげちゃん」が、だいじにしたいもの。へなちょこまじめ日常記。


タイトルの最後の「、」が味わい深い。役たたずと自認していても、どんな些細なことでも、何かしらことを起こせば、まわりまわって何かしらの役に立つことになる、という含みが「、」に込められているように思えてならない。いつも通りの決して優等生ではない、むしろ同じ場所で足踏みしてばかりいるような親しさで、ぽつりぽつりと語られることに真実が感じられる。震災後のあれやこれやに、珍しく憤りをあらわにする様にも頷きたくなる。隣にいるような体温を感じられる心地の一冊である。

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