桜ほうさら*宮部みゆき

  • 2013/04/17(水) 16:55:24

桜ほうさら桜ほうさら
(2013/02/27)
宮部 みゆき

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舞台は江戸深川。
主人公は、22歳の古橋笙之介。上総国搗根藩で小納戸役を仰せつかる古橋家の次男坊。
大好きだった父が賄賂を受け取った疑いをかけられて自刃。兄が蟄居の身となったため、江戸へやって来た笙之介は、父の汚名をそそぎたい、という思いを胸に秘め、深川の富勘長屋に住み、写本の仕事で生計をたてながら事件の真相究明にあたる。父の自刃には搗根藩の御家騒動がからんでいた。
ミステリアスな事件が次々と起きるなか、傷ついた笙之介は思いを遂げることができるのか。「家族は万能薬ではありません」と語る著者が用意した思いがけない結末とは。
厳しい現実を心の奥底にしまい、貸本屋・治兵衛が持ってきたくれた仕事に目を開かれ、「桜の精」との淡い恋にやきもきする笙之介の姿が微笑ましく、思わず応援したくなる人も多いはず。
人生の切なさ、ほろ苦さ、そして長屋の人々の温かさが心に沁みる物語。


とにかく登場人物がみないい。すべてが善人というわけではなく、悪人も、ずるがしこい奴も、ろくでなしも様々いるのだが、どの人物もいまこの時を生きているように見える。主人公の笙之介ももちろんである。武士でありながら剣術の腕はイマイチで、ある目的のために貧乏長屋で貸本屋の治兵衛の頼まれ仕事をしながら暮らしているが、芯には揺るがない強さを持っている。長屋やその周りの人間関係も、つかず離れずありがたい。笙之介自身は、大きな想いに抱かれて操られたようにも見えるが、だからこそそこから前へ進むことができるのだろう。周囲の想いを受け止めた笙之介の明日が穏やかでありますように、と願わずにはいられない一冊である。

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