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まだ遠い光*天童荒太

  • 2004/09/21(火) 19:41:18

☆☆☆☆・


――『家族狩り第五部』

 浚介は游子の病室を訪れた。
 二つの心は、次第に寄り添ってゆく。
 山賀と大野は、哀しみを抱えた家の扉を叩く。
 ふたりの耳は、ただひとつの言葉を求めている。
 冬島母子をめぐり争い続けてきた、馬見原と油井。
 彼らの互いへの憎しみは、いま臨界点を迎えている――。
 悲劇によって結ばれた人びとは、奔流のなかで、
 自らの生に目覚めてゆく。
 永遠に語り継がれる傑作、第五部=完結篇。

                       (文庫裏表紙より)


考え方の論理性と行動の非論理性が ここまでかけ離れてしまうとは。信じることは素晴らしいことだが、時に恐ろし過ぎることである。彼ら――敢えて名前は書かずにおくが――は狂っていたのだろうか。狂っていたのだ、として片付けてしまうことは容易いが、そう決め付けられない何かが 彼らの論理の中にはある。きっと誰もが我が身を省みてうなだれざるを得ない何かが。
少なくとも 亜衣を目覚めさせたのは彼らの行動があったからである。是とするわけには到底いかないが。

さまざまに考えさせられる小説だった。根本的なところは何も解決していないのだが、行く手にかすかな光が見え隠れしている。それが何よりの救いである。
暗闇にひとり取り残された亜衣の想いが胸を突く。

 かすかな光が見えた。二つ、三つと、光の点が視界に入り、
 さらに輝く光が見えた。
 なぜだろう、とても遠いところで輝いているのに、
 この光が自分への〈贈り物〉のように感じられた。



 # 第四部『 巡礼者たち』の覚え書きは9/16に。

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