なぎさ*山本文緒

  • 2013/12/24(火) 19:15:26

なぎさ (単行本)なぎさ (単行本)
(2013/10/19)
山本 文緒

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家事だけが取り柄の主婦、冬乃と、会社員の佐々井。同窓生夫婦二人は故郷長野を飛び出し、久里浜で静かに暮らしていた。佐々井は毎日妻の作る弁当を食べながら、出社せず釣り三昧。佐々井と行動を共にする会社の後輩の川崎は、自分たちの勤め先がブラック企業だと気づいていた。元芸人志望、何をやっても中途半端な川崎は、恋人以外の女性とも関係を持ち、自堕落に日々を過ごしている。夫と川崎に黙々と弁当を作っていた冬乃だったが、転がり込んできた元漫画家の妹、菫に誘われ、「なぎさカフェ」を始めることになる。姉妹が開店準備に忙殺されるうち、佐々井と川崎の身にはそれぞれ大変なことが起こっていた―。苦難を乗り越え生きることの希望を描く、著者15年ぶりの長編小説!


導入部では、一見平穏に見える佐々井と冬乃夫妻の暮らしだが、ほぼ絶縁していた冬乃の妹・菫が、借りていた部屋でぼやを出して転がり込んできたのがきっかけで、さざ波が立つようになる。些細なすれ違いがどんどん二人の心を遠ざけ、それでも表面上はそれまでと変わらず平穏に見えるのが却って怖くもある。佐々井の部下の川崎の自堕落さや懊悩、菫の人間関係や、目論見、切り捨て逃げ出してきた故郷の両親のこと。さまざまなことが冬乃やその周りに波及していく。いたるところにちいさな棘があり、身じろぎするたびに、チクリチクリと苛まれるような、今度は上手くいくかと喜べば、不意に突き落とされるような、やり切れなさと不毛感にも包まれる。だがそれは、もしかするとすべて自分の裡側の問題なのかもしれないと、ふとした瞬間に思ったりもするのである。自分とは何か、活き活き生きるとはどういうことかを深く思わされる一冊である。

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