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金雀枝荘の殺人*今邑彩

  • 2013/12/31(火) 18:44:56

金雀枝荘の殺人 (中公文庫)金雀枝荘の殺人 (中公文庫)
(2013/10/23)
今邑 彩

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完全に封印され「密室」状況となった館で起こった一族六人殺しの真犯人は、いったい誰だったのか。事件から一年後、真相を探るべく館にやってきた兄弟たちは推理合戦を繰り広げる。そして、また悲劇の幕が開いた…。恐怖と幻想に満ちた本格ミステリー。巻末に全著作リストを付す。


70年前にたったひとりドイツから嫁いできたエリザベートのために造られた金雀枝(えにしだ)荘が舞台である。エリザベートはしかし、たった二年で生まれたばかりの子どもを置いてドイツに帰ってしまった。その後主の弥三郎はそこには住まわず、かと言って売ることも取り壊すこともせず、使用人夫婦に管理させていた。その後管理人は、赤ん坊ひとりを残して無理心中したのだが、それでも取り壊すことはしなかった。しかも、二年前に亡くなるときには、金雀枝荘を残すようにという遺言まで残していたのだった。弥三郎亡き後、曾孫たちがクリスマスパーティーをするために金雀枝荘にやってきて、そのときの管理人とともに全員がしたいとなって発見された。そして現在。残された曾孫三人が、金雀枝荘にやってきて物語は佳境に入るのである。曾孫のひとりが例が見えるという女友達を連れてきており、通りがかりに洋館に興味を持って写真を撮っていた、ライターと名乗る男性も加わった。そしてまた人が死ぬのである。昔の霊の呪いなのか、はたまた…。舞台設定と言い、ふたつの事件の死にざまと言い、否応なく興味をそそられ、一刻も早く真実を知りたい欲求が湧き上がる。ライターと名乗る男が探偵役となって過去から続く謎を解き明かしていくのだが、果たしてそれを額面通りに信じていいのかどうかも疑わしい状況になり、何が真実で、誰を信じることができるのかがだんだん判らなくなっていくのもぞくぞくさせられる。人の愚かさや脆さ、弱さ、愛を守ることのむずかしさが絶妙に描かれている。救いのない事件ばかりなのだが、ラストに明るい未来が見えるのが救いである。中身の濃い一冊である。

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