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私のなかの彼女*角田光代

  • 2014/01/13(月) 18:53:16

私のなかの彼女私のなかの彼女
(2013/11/29)
角田 光代

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いつも前を行く彼と、やっと対等になれるはずだったのに――。待望の最新長篇小説。「もしかして、別れようって言ってる?」ごくふつうに恋愛をしていたはずなのに、和歌と仙太郎の関係はどこかでねじ曲がった。全力を注げる仕事を見つけ、ようやく彼に近づけたと思ったのに。母の呪詛。恋人の抑圧。仕事の壁。祖母が求めた書くということ。すべてに抗いもがきながら、自分の道を踏み出す彼女と私の物語。


タイトルから、なんとなく「対岸の彼女」系の物語かと思って読み始めたが、まったく違っていた。蔵を整理するとき、祖母の手になる一冊の本を見つけた和歌は、母から聞かされた醜女であったということ以外にほとんど知らない祖母の人生に興味を持ち、以来祖母が心の中に棲みついたようである。なんとなくぼんやりとして、心から面白がることも少なく、恋人である仙太郎がその才能を花開かせて、ひと足先に社会に出ると、ますます影に引っ込んで無言の規範に自らを押し込めるようになる。そんな自分と、作家になる夢を捨てて家庭に入った祖母とを重ね合わせていたのかもしれない。そして、和歌も物を書く人間になるのだが、いつも自分を解放しきれず、どこかから聞こえてくる声に支配されている気がしている。あれもこれも手に入れたいと望むことはいけないことなのだろうか。何かを選んだら別の何かは諦めなければならないのだろうか。上手く乗り切っていくほどに和歌は器用ではないのだった。仙太郎との関係もいつしかどこかで捻じれ、一緒に歩いていたはずなのに、ふと気づくと隣には誰もいなくなっている。ラストでは自分を取り戻しかけたように見えるが、この先和歌がほんとうに幸福になることはないような気もしてしまう。どうにもならないもどかしさとやり切れなさ、切なさ寂しさ、そして歪な愛が満ちた一冊だと思う。

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