てらさふ*朝倉かすみ

  • 2014/03/16(日) 11:22:38

てらさふてらさふ
(2014/02/13)
朝倉 かすみ

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自分がまがいものであることは承知の上で、スーパースターになって2010年代を疾走することを夢想する堂上弥子(どうのうえやこ)。耳の中で鳴る音に連れられ、どこかに行きたいというきもちがつねにうねっていた鈴木笑顔瑠(すずきにこる=ニコ)
北海道の小さな町で運命的に出会ったふたりの中学生は、それぞれ「ここではないどこか」に行くため、一緒に「仕事」で有名になることを決める。その方法は弥子が背後に回り、ニコが前面に出るというもの。最初の仕事は読書感想文コンクールでの入選。弥子が書いてニコの名前で応募した感想文は見事文部科学大臣奨励賞を受賞、授賞式にはニコが出席した。
ふたつめの仕事は、史上最年少で芥川賞を受賞すること。ニコの曽祖父の遺品の中にあった小説を弥子がアレンジして応募した小説「あかるいよなか」は、芥川賞の登竜門となる文芸誌の新人賞を受賞する。作品はその後順当に芥川賞にノミネート、そしてついに受賞の時を迎えるが……それは「てらさふ」仕事を続けてきた、ふたりの終わりのはじまりだった――。
てらさふ――とは「自慢する」「みせびらかす」こと。「てらさふ」弥子とニコがたどり着いた場所は? 女の子の夢と自意識を描きつくした、朝倉かすみの野心作。


二人の少女が芥川賞を目指してあれこれ作戦を練る物語、と言ってしまうとただの真っ直ぐな青春物語なのだが、そこは著者、ただ健全に真っ直ぐにとはいかないわけである。現実にはその他大勢という立場に甘んじつつも、いつか自分が行くべき場所へ打って出て、ウィキペディアに名を連ねるような活躍をするイメージを常に膨らませる弥子。同級生たちを心のなかでは斜めから見て、自分は彼らと同じではないと密かに嗤っていたりする心の動きは、多かれ少なかれ、誰にでも思い当たる節があるのではないだろうか。そんな弥子と出会ってしまったニコもまた、別の意味でその他大勢に甘んじられる性質ではなかった。胸の中で鳴り響く音楽に急かされるように、自分がいるべきどこかへと走っていきたい衝動を抱え込んでいる反面、そうやっていなくなってしまった祖母や母を哀れんでもいるのである。卵の白身と黄身のようなニコと弥子が企んだのは、芥川賞の最年少受賞者になること。そこに向かい始めた二人は、何を得、何を失くし、どう成長したのかが、見どころである。弥子の懲りなさが恐ろしくもあり、目が離せなくもあり、ぞくぞくする。実際に堂上弥子の名前が芥川賞候補に挙がったらどうしようと思ってしまう一冊である。

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