消えてなくなっても*椰月美智子

  • 2014/05/10(土) 16:50:54

消えてなくなっても (幽ブックス)消えてなくなっても (幽ブックス)
(2014/03/07)
椰月 美智子

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タウン誌の編集をする青年・あおのは、ストレス性の病を抱え、神話の伝説の残る緑深い山中にある鍼灸専門のキシダ治療院を取材で訪れる。どこへ行っても治らないという難病がそこでは治ると評判で、全国から患者が後を立たず訪問する治療院だった。先生に会ってみると明るくさばけており、先生の手伝いとして、同じ年頃の小説家志望のつきのという女性が居候していた。あおのは、自分の治療をかねて、三人暮らしをすることになる。規則正しい暮らし、治療の手伝い、つきのとくだけた本音の付き合いをすることで、あおのの病気は少しずつ回復に向かっていく。そしてついに、あおのは庭先で河童に遭遇する! それが意味するものは……。つきのもあおのも同じように、両親を幼いころ亡くしている。つきのは孤児院に、あおのは親戚に預けられていた。あおのの心を開いたものは何だったのか、二人を結びつけた運命とは……。ラストに用意された大どんでん返しは号泣を誘います。生を願い、死をも恐れない、愛されて人は生まれてきたのだということを思い出させてくれる、生への賛歌。、椰月美智子の最高傑作。本年度、泣ける小説ナンバー1確実。


著者には珍しく、よしもとばななさん的な雰囲気の漂う物語である。精神世界とか、この世ならぬ者との触れ合いなどによって、傷ついた心が少しずつ修復されていく過程は、読んでいる自分も解き放たれていくような解放感と安心感に包まれて――主人公のあおのやつきのの心のなかは不安定であるにもかかわらず――心地好い。これですべてがうまくいく方へ進んでいくのだと思いかけたラスト近くに仕掛けられたどんでん返しは、驚くばかりで、思わず涙を誘われるが、だからこそのこの物語なのだと、次第に納得させられた。心が浄化されるような一冊である。

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