完璧な母親*まさきとしか

  • 2014/07/31(木) 17:03:16

完璧な母親 (単行本)完璧な母親 (単行本)
(2013/10/10)
まさき としか

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友高波琉子(29歳)は、東京のさびれた商店街を歩き、目についたそば屋に入る。テレビのニュース速報で、女が転落した状態で見つかったこと、さらに自分が参考人として追われていることを知る。
私を抱きしめ愛する母は、私を兄の名で呼ぶ。
1981年4月、北関東のT市に暮らす主婦・友高知可子のもとに警察から電話がかかってくる。ひとり息子の波琉(小1)が池で溺れて死亡したという。不育症のため流産を繰り返していた知可子にとって、波琉は結婚8年目でやっと生まれた子供。波琉の誕生日と同じ日に子供を産むことで、波琉を復活させようと考える。波琉子の誕生後、兄の生まれ変わりと言われながら育った波琉子。誕生日には、兄と自分用のプレゼントを受け取り、ケーキには自分の年齢より7本多いろうそくが立てられた。「あなたの体も心も、あなたひとりのものではない」という母の言葉を受け入れ続け母の愛を乞う気持ち、母を憎む気持ちが生まれる。ある日知可子のもとに「さぞ、いい母親なのでしょうね」と一通の手紙が届くが……。一人の掛け替えのない息子の死。それによって歪んでしまった、二つの家族。悩み苦しむ三人の母親、自分の生命の意味を問う三人の子供。彼等が乞う愛、赦しをテーマに家族の愛を書き切る渾身のミステリー長篇。


ミステリかどうかはさて置き、やり切れない物語である。自分を自分として信じられない生のなんと空虚なことか。空っぽの自分の裡側が、愛されるべきだった別の人格で満たされ、ほんとうの自我は否応なく封じ込められる。波琉子の兄・波琉が溺れて亡くなったことで人生が一変してしまった二つの家族の人生が、ある時ふとしたきっかけで交わる。そのことで、動き出したことがよかったのかどうかはよく判らないが、動かなければ何の解決にもならなかったのも確かだろう。完璧な母親がいい母親というわけでもないのだとやり切れない思いでいっぱいになる一冊である。

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