御子を抱く*石持浅海

  • 2014/08/21(木) 13:02:51

御子を抱く御子を抱く
(2014/07/14)
石持 浅海

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埼玉県越谷市某町―絵に描いた様に平和な新興住宅地であるこの町の住民の多くは、ある人物を師と仰ぐ集団の「門下生たち」によって占められていた。彼らは師亡き後も、その清廉な教えに恥じぬよう行動し、なんとか結束を保っていた。目覚めぬ遺児「御子」をめぐり牽制し合いながら…。しかし、かつて御子の生命を救った異端の研究者の死で、門下生たちの均衡は破れた。「私たちこそが、御子をいただくのにふさわしい」三つに分裂した各派閥によって始まった、熾烈な後継者争い。立て続けに起こる、凄惨な第二の死、第三の死。驚愕の真犯人が、人の命と引き換えてまで守ろうとしたものとは!?奇抜な状況設定における人間心理を、ひたすらロジカルに思考するミステリー界のトリックスター、石持浅海が放つ渾身の書下ろし長編。


新興宗教ではないのだが、門下生と呼ばれる者たちがそれに近い心理状態にあり、星川という一会社員を崇める構図ができあがっていた。星川は普通の人間で、ただ真心から他人に接するという気質の人だったのだが、彼の急死後、彼を取り巻いていた人々の間に動揺が広がる。階段から落ちて亡くなった星川の前妻と、大怪我をし、九死に一生を得たが未だに眠ったままの、門下生の間で「御子」と呼ばれるひとり息子、そして恋人であり事実上の現在の妻・順子、さらには門下生間の派閥のにらみ合いのようなものが先行きを暗くしているところであった。そんなときに御子の生命維持に関わる研究者江口が交通事故で亡くなり、辛うじて保たれていた均衡が揺らぐことになる。たまたま江口の救命活動に手を貸してくれた深井が、まったくの第三者としての客観的な観察眼で、論理的に絡まった糸をほぐしていくのが痛快である。誰ひとり悪人がいないのに、不幸が連鎖してしまい、何か痛ましいような心持ちになる一冊である。

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