母親ウエスタン*原田ひ香

  • 2014/10/05(日) 13:35:29

母親ウエスタン母親ウエスタン
(2012/09/15)
原田 ひ香

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母のない子持ちやもめの家庭を転々と渡り歩く広美。短いときは数か月、長くとも数年、トラック運転手や遠洋漁業、家を長く空ける父子家庭の母親役をして、家庭が軌道にのると人知れず去っていく。それは、母性が有り余っているのか、母性がぶっ壊れているのか、子供にとっては女神でもあり、突然姿を消す残酷な悪魔でもある。すばる文学賞受賞作家が挑む、初の長編エンターテインメント。ひたすらに“母”をさすらう女の物語。


「彼はすぐに忘れた」 「電話は一度しかかかってこなかった」 「免許証を盗み見た」 「夜明けにロックを歌った」 「耳栓をおいていった」 「エピローグ」

「おそれいりましてございます」という言葉が特徴的な広美とはいったい何者なのか。ことさら見返りを求めるそぶりもなく、心からの愛情を注いで(いるようにみえる)母のいない子どもの世話をし、ある日突然姿を消す。聖母なのか、はたまた極めて身勝手なのか、広美の素性や目的が何ひとつ判らないので、なおさら興味を掻き立てられる。だが、ひとたび残された子どもたちの身になってみれば、自分だけの母親だと思って安心していたらある日突然いなくなり、心に深い傷を負わせたひどい女なのである。子どもたちの哀しみと広美の喪失感が、時を隔てて交互に描かれる物語から滲み出してきて、やり切れない心持ちにさせられる。どちらにとっても満足な結末はないのだろうと思わされる一冊である。

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