アポロンの嘲笑*中山七里

  • 2014/12/22(月) 07:13:25

アポロンの嘲笑アポロンの嘲笑
(2014/09/05)
中山 七里

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<管内に殺人事件発生>の報が飛び込んできたのは、東日本大震災から五日目のことだった。
被害者は原発作業員の金城純一。被疑者の加瀬邦彦は口論の末、純一を刺したのだという。
福島県石川警察署刑事課の仁科係長は移送を担うが、余震が起きた混乱に乗じて邦彦に逃げられてしまう。
邦彦は、危険極まりない“ある場所"に向かっていた。仁科は、純一と邦彦の過去を探るうちに驚愕の真実にたどり着く。
一体何が邦彦を動かしているのか。自らの命を懸けても守り抜きたいものとは何なのか。そして殺人事件の真相は――。
極限状態に置かれた人間の生き様を描く、異色の衝撃作!


ただでさえ胸が痛み気持ちが沈む大震災とそれに続く原発事故の現場を舞台にした物語である。殺人事件の被害者は、阪神淡路大震災で被災し、心機一転福島に移住し、原発で働く青年。被疑者は、阪神淡路大震災で、盾になってくれた両親のおかげで奇跡的に命拾いしたが、その後の不遇により期せずして福島で原発作業員として働く男。それだけで充分背負ったものの重さにやり切れなくなるのだが、運命はさらに彼らを追いつめたのだった。福島第一原発の作業の過酷さ、政府や東電の対応の杜撰さに憤りを覚え、地団太踏みたくなるのはもちろん、それとは別に、その中で不気味に進んでいた計画の恐ろしさに背筋が寒くなる。なにより、実際にそんなことがあったとしても――そしてこのことだけではもちろんなく――、一般国民には全く知らされずに闇に葬られる可能性を想うと、一体何を信じればいいのだろうという虚しさが胸を覆う。穏やかな暮らしがいちばんだと改めて思わされる一冊でもある。

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