ヤモリ、カエル、シジミチョウ*江國香織

  • 2015/01/31(土) 10:26:50

ヤモリ、カエル、シジミチョウヤモリ、カエル、シジミチョウ
(2014/11/07)
江國 香織

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虫と話をする幼稚園児の拓人、そんな弟を懸命に庇護しようとする姉、ためらいなく恋人との時間を優先させる父、その帰りを思い煩いながら待ちつづける母―。危ういバランスにある家族にいて、拓人が両親と姉のほかにちかしさを覚えるのは、ヤモリやカエルといった小さな生き物たち。彼らは言葉を発さなくとも、拓人と意思の疎通ができる世界の住人だ。近隣の自然とふれあいながら、ゆるやかに成長する拓人。一方で、家族をはじめ、近くに住まう大人たちの生活は刻々と変化していく。静かな、しかし決して穏やかではいられない日常を精緻な文章で描きながら、小さな子どもが世界を感受する一瞬を、ふかい企みによって鮮やかに捉えた野心的長篇小説。


大人の世界の中での子どもの存在とその世界が瑞々しく描かれていて胸を突かれる。平然と浮気を続けながら、平然と家にも帰って来る夫と、鬱屈しながらもその状態を崩そうとはしない妻。そんな大人を父と母として、郁美と拓人は日々を過ごしている。幼稚園児の拓人は、心の中で虫と話ができ、それは特殊能力でもあるのだろうが、子どもの本質のようにも思われる。大人から声をかけられた時の反応や、他人の認知の仕方が、おそらくどんな子どももある程度こうなのだろうと、さまざまなことが腑に落ちもするのである。ある意味欲に駆られた大人の事情とは全くかけ離れたところにある子どもの世界のみずみずしさに溺れそうになる一冊である。

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