異邦人(いりびと)*原田マハ

  • 2015/04/06(月) 07:24:44

異邦人(いりびと)異邦人(いりびと)
(2015/02/25)
原田 マハ

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一枚の絵が、ふたりの止まった時間を動かし始める。
たかむら画廊の青年専務・篁一輝(たかむら・かずき)と結婚した有吉美術館の副館長・菜穂は、出産を控えて東京を離れ、京都に長期逗留していた。妊婦としての生活に鬱々とする菜穂だったが、気分転換に出かけた老舗の画廊で、一枚の絵に心を奪われる。画廊の奥で、強い磁力を放つその絵を描いたのは、まだ無名の若き女性画家。深く、冷たい瞳を持つ彼女は、声を失くしていた――。
京都の移ろう四季を背景に描かれる、若き画家の才能をめぐる人々の「業」。
『楽園のカンヴァス』の著者、新境地の衝撃作。


惹きこまれるように読んだ。京都の古より続く暮らしの美しさ、暮らす人々の立居振舞の美しさ、日々の暮らしに根づいた風流を肌で感じられる気がした。そこに、声を失ったという謎めいた未開拓の画家の登場である。惹きこまれないはずがない。東京での篁家と有吉家の関わりや、それぞれのお家事情などが絡みあって、セレブリティの内幕を興味本位で覗くようなミーハー的悦びもあり、純粋に美に没入する菜穂を応援したい気持ちにもなる。画家・白根樹(たつる)の謎が解かれるとき、それまでの不可解が腑に落ちる。ただ、菜穂を京都に長逗留させるのに必要だったのだろうとは思うが、原発事故の影響から胎児とともに逃れることを理由にしたのには少し引っかかるものがあったのも事実である。美しく純粋で残酷な一冊である。

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