手のひらの幻獣*三崎亜記

  • 2015/05/26(火) 13:11:48

手のひらの幻獣
手のひらの幻獣
posted with amazlet at 15.05.26
三崎 亜記
集英社
売り上げランキング: 156,095

動物のイメージをあやつる異能力者の日野原柚月は、同じ能力を持つ者たちが所属する会社に勤めて早10年。孤独ながら安定した日々を送っていた。そんなある日、出来たばかりの新研究所を警備する業務を任される。しかしそこには異能力者のパワーを増幅する禁断の存在が隠されていて…。近くて遠い並行世界を描き出す2つの中編を収録。


『廃虚建築士』の中の『図書館』の流れを汲む表出者たちの物語である。冒頭には、実在しないものをあたかもそこに在るように表出させ、思い通りに操る能力の持ち主である表出者の日々の仕事がなんでもないことのように淡々と描かれているが、すでにそこからにして不思議世界である。ここで撥ねつけてしまったら三崎作品は先へ進めない。柚月たち表出者たちがそうやって日々の仕事をこなしている裏では、秘密裏に胡乱な計画が進められている。その一端が垣間見られた時、柚月たちは命さえかけて守ろうとするものがあるのだった。異能の持ち主であるということと、さまざまな感情を持つ普通の人間であることの狭間で、それでも仕事としての表出で自らの内側を削りながら生きなければならないというジレンマ。現実とは違う世界でありながら、それはとてもよく理解できることでもあるのだ。痛みを伴いつつも甘やかな一冊である。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

ちょうど読了したところでした。「廃墟建築士」は未読だったので、また読んでみます。
静かなのに訴えかける力に、惹かれます。初期の「となり町戦争」が衝撃だっただけに、どうもちょっと物足りなさを感じていましたが、いい作品に逢えました。

  • 投稿者: チョロ
  • 2015/05/26(火) 17:13:42
  • [編集]

『となり町戦争』はほんとうに衝撃的でしたね。
あれですっかり三崎さんに魅せられてしまいました。

わたしたちが暮らす現実世界の、ほんの小さな裂け目から
ある日するりと三崎ワールドに迷い込んでしまいそうな錯覚を起こしそうです。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2015/05/26(火) 18:22:06
  • [編集]

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する