冥途あり*長野まゆみ

  • 2015/08/25(火) 18:47:19

冥途あり
冥途あり
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長野 まゆみ
講談社
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川辺の下町、東京・三河島。そこに生まれた父の生涯は、ゆるやかな川の流れのようにつつましくおだやかだった―。そう信じていたが、じつは思わぬ蛇行を繰り返していたのだった。亡くなってから意外な横顔に触れた娘は、あらためて父の生き方に思いを馳せるが…。遠ざかる昭和の原風景とともに描き出すある家族の物語。


「冥途あり」 「まるせい湯」

「冥途あり」は、思い出語りをしているように家族や親類とのあれこれが淡々と綴られ、まるでエッセイのような印象である。生きている間に知ることのなかった父親の姿が、懐かしい昭和の風物とともに立ち上がってくる。記憶にある出来事のひとコマの背後に在った事々が、不思議な感慨とともに明らかにされ、さまざまなことが腑に落ちたりもするのである。それに比べて「まるせい湯」は、ペテン師の素質がありそうな双子の従兄弟のせいもあり、どこまでが真実で、どこからが作り事なのか、従兄弟の話を聴きながらも定かではない。その証が立てられないとらえどころのないもどかしさで、夢の中にいるような不思議な心地にさせられる。見たこともない家族の末席にいつの間にか連なっているような心地の一冊である。

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