抱く女*桐野夏生

  • 2015/08/29(土) 14:16:16

抱く女
抱く女
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桐野 夏生
新潮社
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この主人公は、私自身だ――。1972年、吉祥寺、ジャズ喫茶、学生運動、恋愛。「抱かれる女から抱く女へ」と叫ばれ、あさま山荘事件が起き、不穏な風が吹く七〇年代。二十歳の女子大生・直子は、社会に傷つき反発しながらも、ウーマンリブや学生運動には違和感を覚えていた。必死に自分の居場所を求める彼女は、やがて初めての恋愛に狂おしくのめり込んでいく――。揺れ動く時代に切実に生きる女性の姿を描く、永遠の青春小説。


高野悦子氏の『二十歳の原点』と同じ空気が重たく流れている(考えていることはまったく違うとしても)。その時代に生きていなければわからない時代そのものの空気なのだろうが、この空気の中で学生時代を過ごさなくて済んで幸運だった。訳知り顔で何かに倦んだような怠惰さを身にまとい、自堕落を絵に描いたような日々を送る学生たち。自分たちの未熟さを微塵も解っていないのが――時代の風潮だとしても――鼻につく。読んでいる間中、胸のなかが澱んでいて息苦しいほどだった。ただ、そのころと現在とで何かが変わったかと問われると、形は違えど本質は何も変わっていないような気もして憂鬱になる。別世界に逃げ出したくなるような一冊だった。

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