悲素*帚木蓬生

  • 2015/09/27(日) 16:40:56

悲素
悲素
posted with amazlet at 15.09.27
帚木 蓬生
新潮社
売り上げランキング: 37,480

悲劇は、夏祭りから始まった―。多くの犠牲者を出した砒素中毒事件。地元刑事の要請を受け、ひとりの医師が、九州から和歌山へと向かった。医師と刑事たちは地を這うように、真実へと近づいていくが―。現役医師の著者にしか描きえない、「鎮魂」と「怒り」に満ちた医学ミステリーの最高峰!


まるでノンフィクションのような小説である。丁寧に取材され、おそらく限りなく事実に忠実な形に仕上げられているのだと思われる。読みながら、事件当時毎日のようにテレビ画面から見せつけられていた挑発的な態度がまざまざと思い出された。そしてその裏に、これほど真剣に、自らの時間を捧げるようにして、診察し、検証し、捜査する人々がいたことに改めて思いを致すのである。個人が起こしたとは思えないほどの被害者の数とその後も続く苦しみを思うと、忘れてはいけない事件だと改めて思う。周到なようで杜撰でもあり、事実は小説よりも奇なりを地で行くような事件でもある。息詰まるような緊張感とやり切れなさ、そして感謝の気持ちに満たされた一冊である。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する