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家へ*石田千

  • 2015/11/26(木) 20:15:22

家へ
家へ
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石田 千
講談社
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東京の美大で彫刻を学ぶ大学院生「シン」は、母と、その内縁の夫「じいさん」と新潟の海辺の町で育った。一方、島に住む実の父親「倫さん」とも親しく交流を続けている。複雑ながら穏やかな関係を保つ家族だったが、シンの心には小さな違和感が芽生えはじめる…。


とても穏やかで静かなのに、なんて複雑で込み入った人間関係なのだろう。逆に言えば、これほどの複雑さを描いて、どうしてここまで穏やかな風情でいられるのだろう、と不思議になる。登場人物それぞれに屈託がないわけがないのだから、各人がそれを大らかに呑みこんで裡側の波風を外に放たないのだろう。それでもまだ若いシン(新太郎)は、そのすべてをそのまま呑みこみ切れずに、違和感としてわだかまりを覚えもするのだろう。なにがあっても迎え入れてくれる屋根がふたつある、という、島のばっちゃんの言葉が胸に響く。みんなしあわせになれ、と思わされる一冊である。

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