空に牡丹*大島真寿美

  • 2015/12/30(水) 19:09:11

空に牡丹
空に牡丹
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大島 真寿美
小学館
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時は明治。花火に心奪われた男の生涯!
私のご先祖様には、花火に魅せられて生きた静助さんという人がいる。
親族みんなが語りたくなる静助さんのことを、私は物語にすることにした――。
時は明治。江戸からそれほど遠くない丹賀宇多村の大地主の次男坊として生まれた静助は、村人から頼られる庄左衛門、母親の粂、腹違いの兄・欣市と暮らしていた。ある日、新し物好きの粂と出かけた両国・隅田川で、打ち上げ花火を見物した静助は、夜空に咲いては散る花火にひと目で魅了される。江戸の有名な花火屋たちは、より鮮やかな花火を上げるため競って研究をしているという。
静助は花火職人だった杢を口説き落とし、潤沢な資金を元手に花火作りに夢中になるが、次第に時代の波が静助の一族を呑み込んでいく。


丹賀宇多(にかうだ)村の元名主・可津倉(かつくら)家の当主・庄左衛門と後妻の粂(くめ)との間の子である静助は、先妻との子である兄・欣市が次期当主として期待されるのとは裏腹に、何の期待も持たれず気ままに成長していったのである。いつしか花火に心を奪われ、のめり込んでいくが、責める者も、止める者もいなかった。周りは年を経るごとにさまざまに変化するが、静助は、基本的に変わることはなく、稼業に励んでいても昔ながらの静助なのであった。家が傾くほど花火に私財を投じるとは、いささか道楽が過ぎる気もするが、どういうわけかそれを責める人はおらず、却って感謝されさえするのである。人徳とでもいうのだろうか。身近にいたらいらいらしそうな人物ではあるが、根が悪い人ではないので、始末が悪いとも言える。あっけない理由で亡くなったときに、村人たちが盛大に花火を上げて見送る場面では、思わず胸が熱くなってしまった。子孫が思わず語りたくなるのは、こんな気持ちからだろうか、と想ってみたりもするのである。のどかで大らかで、なぜか憎めない静助の物語である。

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