凪の司祭*石持浅海

  • 2016/02/18(木) 14:02:45

凪の司祭
凪の司祭
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石持 浅海
幻冬舎
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暑さが残る初秋の、とある土曜。コーヒー専門店店員・篠崎百代は、一人で汐留のショッピングモールへと向かった。できるだけ多くの人間を殺害するために。一方、百代の協力者・藤間護らは、仲間の木下が死亡しているのを発見する。計画の中止を告げるため、百代を追う藤間たちだったが…。緻密な設定と息もつかせぬ展開で、一気読み必至の傑作大長編!


こんなに普通のテロリストが現れてしまったら、手の打ちようがないではないか、というのが最初の感想である。だって、実行犯は、婚約者が継ぐ食堂を手伝うのに役立つようにとのコーヒー専門店でアルバイトをしているごく普通のどこにでもいる女性なのだから。政治的背景があるわけでもなく、後ろ盾にコワイ団体がついているわけでもない、ごく平凡な一般市民。それが、恋人の突然の死、それをもたらした遠因のひとつかもしれない場所を標的にして、二度と使い物にならないようにし、今後同じような被害者が出ることを少しでも防ぐために、綿密に計画されたテロなのだから。ごく普通に暮らしていた女性が、これほどまでに残酷な行動に徹しきれるのだろうか、という疑問は当然湧くが、それを於いておいたとしても、似たような状況に置かれたときに、群衆が取る反応は充分想像の範囲である。そして、日本の警察や機動隊がこの状況に対処するのは難しいだろうことも想像に難くない。だからなおさら恐ろしい。いやだいやだ。絶対に起こってほしくない事件である。にもかかわらず、ほんの少し百代を応援しそうになってしまうのは、動機ゆえだろうか。それにしても、動機はともかく、それ以後の行動はまさにテロリストの論理である。背筋が凍るような一冊だった。

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