江ノ島西浦写真館*三上延

  • 2016/02/19(金) 09:40:44

江ノ島西浦写真館
江ノ島西浦写真館
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三上 延
光文社
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江ノ島の路地の奥、ひっそりとした入り江に佇む「江ノ島西浦写真館」。百年間営業を続けたその写真館は、館主の死により幕を閉じた。過去のある出来事から写真家の夢を諦めていた孫の桂木繭は、祖母の遺品整理のため写真館を訪れる。そこには注文したまま誰も受け取りに来ない、とごか歪な「未渡し写真」の詰まった缶があった。繭は写真を受け取りに来た青年・真鳥と共に、写真の謎を解き、注文主に返していくが―。


ビブリア古書堂の趣をそのままに、舞台を江ノ島の写真館に移したような物語である。主人公の繭は、写真館を営む祖母の手ほどきで、写真に興味を持ち、専門学校に通うようになるが、そこで、自分の考えの足りなさから、自ら撮った写真によってある人物を傷つけてしまう。それをトラウマとしてずっと胸に抱え続け、それ以後カメラさえ手放して写真から遠ざかる暮らしをしていたが、祖母が亡くなり、遺品整理のために写真館を訪れなければならなくなった。そこで出会った真鳥秋孝や、残されていた未渡しの写真に絡む謎を、繭が解き明かしていくのである。閉じられた写真館に残された写真、というどこか暗い雰囲気が、繭の心象ともマッチしていて、趣きのある風景になり、しっとりとした時間が流れる印象になっている。ラストの種明かしには、閉じられていた窓を開け放ったような明るさが感じられて、ほっとさせてくれる。やさしい一冊である。

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