スーツケースの半分は*近藤史恵

  • 2016/02/25(木) 07:17:46

スーツケースの半分は
近藤史恵
祥伝社
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三十歳を目前にした真美は、フリーマーケットで見つけた青いスーツケースに一目惚れ、衝動買いをしてしまう。
そのとき、彼女の中で何かが変わった。心配性な夫の反対を押し切り、憧れのNYへ初めての一人旅を決意する。
出発を直前にして、過去のある記憶が蘇り、不安に駆られる真美。
しかし、鞄のポケットから見つけた「あなたの旅に、幸多かれ」というメッセージに背中を押され、真美はNYへ旅立った。
やがてその鞄は友人たちへとバトンされ、世界中を旅するうちに、“幸運のスーツケース"と呼ばれるようになってゆく――。

大丈夫。一歩踏み出せば、どこへだって行ける。
NY、香港、アブダビ、パリ、シュトゥットガルト……新しい自分に出会う、切なく優しい旅ものがたり。


30歳を目前にした四人の女性、真美、花恵、ゆり香、悠子、そして、スーツケースの持ち主だった加奈子の物語である。フリーマーケットで偶然出会った青い革のスーツケースが、四人の女性たちの旅の友となり、彼女たちのなかの何かを少しずつ解きほぐして変えていくのである。物理的な旅行の様子を描きながら、実は、心の旅の物語なのではないだろうか。彼女たちの間で「幸運のスーツケース」と呼ばれるようになった青いスーツケースのもともとの持ち主の気持ちと、それを受け継いだ娘や孫娘の人生にも影響を与えていて、胸にあたたかいものが満ちてくる。人はみなそれぞれの場所で生き、極個人的な屈託を抱え、何かを乗り越えようとしながら日々を送っているのだろう。そこに現れた鮮やかな青色が、のびのびと広がる世界の象徴のようである。読み終えた後に、何かが吹っ切れる心地になれる一冊でもある。

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