薄情*絲山秋子

  • 2016/03/09(水) 07:35:26

薄情
薄情
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絲山 秋子
新潮社
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境界とはなにか、よそ者とは誰かーー。
土地に寄り添い描かれる、迫真のドラマ。

地方都市に暮らす宇田川静生は、他者への深入りを避け日々をやり過ごしてきた。だが、高校時代の後輩女子・蜂須賀との再会や、東京から移住した木工職人・鹿谷さんとの交流を通し、徐々に考えを改めていく。そしてある日、決定的な事件が起き――。季節の移り変わりとともに揺れる主人公の内面を照らし出す、著者渾身の長編小説。


群馬という、地方というには東京が身近にあり、だがやはり人々の暮らしは田舎暮らしに近い地方都市を舞台に、地の者と、一旦外に出て戻ってきた者、そして都会からやって来た者との微妙な感覚の差異と、それに気づいて揺れる気持ちが描かれた物語である。いまいる所に、自分というパズルのピースがかっちりはまる場所がないような、心もとない気分を「薄情」と表したのだろうか。宇田川の思考の過程――ことに蜂須賀に関する――が、個人的にはあまりよく理解できないのだが、地方都市で生きていくということの鬱屈が関わっているのだろうか、とは思わされる。自分の立っている場所を無条件に受け入れられない葛藤は、じわじわと沁みこむように伝わってくる。鹿谷さんはずるくて嫌いだ。宇田川が、薄い卵殻越しに見ていた世界が、殻が壊れることでクリアになることを祈るような心地になる一冊である。

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