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坂の途中の家*角田光代

  • 2016/04/05(火) 21:16:40

坂の途中の家
坂の途中の家
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角田光代
朝日新聞出版 (2016-01-07)
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刑事裁判の補充裁判員になった里沙子は、子どもを殺した母親をめぐる証言にふれるうち、いつしか彼女の境遇にみずからを重ねていくのだった―。社会を震撼させた乳幼児の虐待死事件と“家族”であることの心と闇に迫る心理サスペンス。


裁判員裁判の裁判員(里沙子の場合補充裁判員だが)に選ばれた場合の、普段の生活に与える影響の大きさ、幼児虐待、そして被告の立場と近い境遇にある里沙子の苦悩と葛藤。そんなさまざまな要素が絡み合って先へ先へとページを繰る手が止まらなかった。角田さん、さすがに上手い。ただ、読んでいる最中から、重苦しい気分が胸に沈殿するようで、それは解決されずに読後も引きずったままである。どうすればよかったのだろう、という問いが、胸のなかを渦巻く。被告人の水穂の真実がほんとうに明らかにされたのかどうかも確信は持てないが、そのことが、裁判というもののもどかしさをよく表しているとも思える。いろいろなことを考えさせられる一冊である。

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