ユートピア*湊かなえ

  • 2016/06/09(木) 18:35:48

ユートピア
ユートピア
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湊 かなえ
集英社
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善意は、悪意より恐ろしい。
足の不自由な小学生・久美香の存在をきっかけに、母親たちがボランティア基金「クララの翼」を設立。
しかし些細な価値観のズレから連帯が軋みはじめ、やがて不穏な事件が姿を表わす――。
湊かなえが放つ、心理サスペンスの決定版。

地方の商店街に古くから続く仏具店の嫁・菜々子と、夫の転勤がきっかけで社宅住まいをしている妻・光稀、移住してきた陶芸家・すみれ。
美しい海辺の町で、立場の違う3人の女性たちが出会う。
「誰かのために役に立ちたい」という思いを抱え、それぞれの理想郷を探すが――。


菜々子、光稀、すみれという育ちも立場も三者三様の女性たちを軸に、彼女らの娘たち、地の人たちと他所から来た人たちの関係性、過去の殺人事件、とさまざまな要素が絡み合い、それぞれの思惑がもつれ合って表面的には穏やかな鼻崎町にどす黒い淀みとなっている様から目が離せない。同じものを見て同じ体験をしても、各自が自分を中心に置いて受け取れば、こうも違った景色になるのかということにも、もどかしさを感じつつ興味深く、その先を知りたくさせる要素のひとつである。終盤、過去の殺人事件を絡めてラストに向かう辺りから、いささか先を急ぎ過ぎたような印象であり、あまりにもあっけなかったようにも思われる。ただ、母親たちのせめぎあいに目を奪われている陰で、子どもたちにも子どもたちなりの真剣な悩みがあったことを思うと、切なくやるせなくもある。結局は真に分かり合えたとは言えず、胸に澱むものを残して終わった一冊である。

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