エミリの小さな包丁*森沢明夫

  • 2016/06/17(金) 18:28:55

エミリの小さな包丁
エミリの小さな包丁
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森沢 明夫
KADOKAWA/角川書店 (2016-04-27)
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信じていた恋人に騙され、職業もお金も、居場所さえも失った25歳のエミリ。藁にもすがる思いで10年以上連絡を取っていなかった祖父の家へ転がり込む。心に傷を負ったエミリは、人からの親切を素直に受け入れられない。しかし、淡々と包丁を研ぎ、食事を仕度する祖父の姿を見ているうちに、小さな変化が起こり始める。食に対する姿勢、人との付き合い、もののとらえ方や考え方…。周囲の人たち、そして疎遠だった親との関係を一歩踏み出そうと思い始める―。「毎日をきちんと生きる」ことは、人生を大切に歩むこと。人間の限りない温かさと心の再生を描いた、癒やしの物語。


傷心のエミリは、嫌っている母の父親で、千葉の漁師町・龍浦で、銅の風鈴を作りながらひとりで暮らしている祖父・大三の元に転がり込んだ。なにも訊かずにエミリを受け入れてくれた祖父は、自ら釣った魚やご近所さんからもらった野菜などで、毎日おいしいご飯を作ってくれる。出てくるお惣菜が、どれもこれもおいしそうで、下ごしらえの丁寧さや、素材を無駄にしないで、無駄なく使いまわす大三さんの姿勢が素敵すぎてしびれる。大三さんを通して龍浦で知り合った人たちの思いやりやあたたかさに触れ、しっかりと包丁を研ぎ、丁寧に料理をしておいしくいただく。そんな日々がエミリを少しずつ変えていく。男出入りが激しいと毛嫌いしていた母の実情は、読者にはわかったがエミリはまだ知らない。でも、大三さんが言うように、遠くない日にきっと知ることになるのだろうと思わせるラストで、希望が見えるのがいい。登場人物たちみんなのこれからをずっと見守っていたい心地にさせられる一冊である。

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