バラカ*桐野夏生

  • 2016/06/29(水) 18:42:38

バラカ
バラカ
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桐野 夏生
集英社
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私の「震災履歴」は、この小説と共にありました。
重力に逆らい、伸びやかに書いたつもりです。
まだ苦難の中にいる人のために、ぜひ読んでください。 桐野夏生

今、この時代に、読むべき物語。
桐野文学の最高到達点!

震災のため原発4基がすべて爆発した! 警戒区域で発見された一人の少女「バラカ」。彼女がその後の世界を変えていく存在だったとは――。
ありえたかもしれない日本で、世界で蠢く男と女、その愛と憎悪そして勇気。想像を遥かに超えるスケールで描かれるノンストップ・ダーク・ロマン!

子供欲しさにドバイの赤ん坊市場を訪れる日本人女性、酒と暴力に溺れる日系ブラジル人、絶大な人気を誇る破戒的牧師、フクシマの観光地化を目論む若者集団、悪魔的な権力を思うままにふるう謎の葬儀屋、そして放射能警戒区域での犬猫保護ボランティアに志願した老人が見つけた、「ばらか」としか言葉を発さない一人の少女……。人間達の欲望は増殖し、物語は加速する。そして日本は滅びに向かうのだろうか――。
桐野夏生が2011年夏から4年にわたって、危機的な日本と並行してリアルタイムに連載してきた作品が、震災から5年を経た今、ついに書籍化!


読む前には、「バラカ」が女の子の名前だとは思わなかった。しかも、ドバイのスーク(市場)で売られている子どもはみなこの名前で呼ばれているのだという(イスラム教で「神の恩寵」という意味だそうではあるが……)。東日本大震災、福島第一原発事故以後、現実からほんの小さい角度でずれた未来の物語であるが、そのずれはどんどん広がっていく。ただ、こうであったかもしれない世界が描かれることで、その恐ろしさは容易に想像できるものとなり、より現実感を伴う物語になっている。バラカの出自、原発事故のその後の悲惨さ、反発する勢力間の駆け引き、インターネットの拡散力、誰がほんとうの味方なのか皆目わからない不信感。さまざまな要素が盛り込まれているが、唯一バラカだけが揺らがない印象である。いちばん非力で心細いはずのバラカの強さはどこからくるのだろうか。自分がどこから来て、誰なのかを知りたいという強い欲求と、穏やかなしあわせを手にしたいという強い思いが彼女を支えていたのかもしれない。他人事とは思えないあまりに悲惨な一連の出来事のあとで描かれるエピローグに救われる思いである。これからバラカが穏やかに笑って暮らせますようにと切に祈る一冊である。

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