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サブマリン*伊坂幸太郎

  • 2016/07/26(火) 17:06:14

サブマリン
サブマリン
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伊坂 幸太郎
講談社
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「武藤、別におまえが頑張ったところで、事件が起きる時は起きるし、起きないなら起きない。そうだろ? いつもの仕事と一緒だ。俺たちの頑張りとは無関係に、少年は更生するし、駄目な時は駄目だ」/「でも」/うるせえなあ、と言いたげに陣内さんが顔をしかめた。/「だいたい陣内さん、頑張ってる時ってあるんですか?」/と僕は言ったが電車の走行音が激しくなったせいか、聞こえていないようだった。(本文より)

『チルドレン』から、12年。家裁調査官・陣内と武藤が出会う、新たな「少年」たちと、罪と罰の物語。


陣内と永瀬の物語ふたたび、である。相変わらずの陣内である。絶対に上司にしたくない人の上位に位置づけられるのは間違いなく、部下として働く武藤の日々のストレスたるやいかばかりかと同情を禁じ得ない。上司にはしたくないし、親しい友人としてもどうかと思う陣内ではあるのだが、だからと言って憎むべき屋からかといえば、まったくそうではなく、逆になんともかっこよかったりもするから始末が悪い。家裁調査官などと言う職業にはもっとも向いていない人材と言えそうなのだが、その実、結果だけを見れば、天職かもしれないとさえ思えてしまう不思議さ。陣内という人のことが、まるで分らなくなるが、ほんの中にいてくれさえすれば、なんとも魅力的なのである。ただいい加減なことを吹聴しているだけに見えて、結構核心を突いたことを言っていたりもして、担当した少年たちも、周りの大人たちも、いつの間にか取り込まれていると言った感じである。陣内の謎にもっと迫りたい。次も愉しみにしたいシリーズである。

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