大きな鳥にさらわれないよう*川上弘美

  • 2016/08/01(月) 18:44:38

大きな鳥にさらわれないよう
川上 弘美
講談社
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遠く遙かな未来、滅亡の危機に瀕した人類は、「母」のもと小さなグループに分かれて暮らしていた。異なるグループの人間が交雑したときに、、新しい遺伝子を持つ人間──いわば進化する可能性のある人間の誕生を願って。彼らは、進化を期待し、それによって種の存続を目指したのだった。
しかし、それは、本当に人類が選びとった世界だったのだろうか?
絶望的ながら、どこかなつかしく牧歌的な未来世界。かすかな光を希求する人間の行く末を暗示した川上弘美の「新しい神話」


遠い未来の物語、ということなのだが、遥か太古から絶えず繰り返してきた生命の営みのようにも思われて、他人事とは思えず、味わい深い。人は、同じようなことを繰り返していると思っているが、実は少しずつ、大きな力に操られるように道を逸れて違う世界に足を踏み入れているのかもしれない。そして、最初の内こそ抱いていた違和感をも呑み込んで、何事もなかったように別の生き方を始めるのである。それさえもいま現在の人間社会を見せられているようで、背筋が寒くなる心地でもある。誰もが諍いなく平和に穏やかに暮らしたいと願っているわけでもなさそうである。含むところが深い一冊である。

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