頼むからほっといてくれ*桂望実

  • 2016/09/24(土) 17:08:19

頼むから、ほっといてくれ
桂 望実
幻冬舎
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トランポリンでオリンピックを目指す五人がいた。天才肌の遼、愚直な順也、おっちょこちょいな慎司、目立ちたがり屋の洋充、怖いもの知らずの卓志。少年の頃から切磋琢磨してきた彼らに、安易な仲間意識などなかった。「オリンピック出場枠」という現実が、それぞれの青春を息苦しいものに変えていく。夢舞台に立てるのは、二人だけ。選ばれるのは誰なのか?選ばれなかった者は敗残者なのか?オリンピックは、すべてを賭けるに値する舞台だったのか?懸命に今を生きる者だけに許された至福、喪失、そして再生を、祈りにも似た筆致で描いた傑作長編小説。


トランポリン競技に関わる五人の、少年時代から大人になるまでが描かれた物語である。家庭環境も性格も違う五人の少年たちは、それぞれの思いでトランポリンを始め、それぞれ違った個性で練習を積み、技術を体得していく。その過程で、ぐんと伸びたり、躓いたり、厭になったり、トランポリンに対する熱量も折々に変化する様も興味深い。成長するにしたがって悩みも変化し、さまざまなことを考え始める様もまた若者らしくて胸が熱くなる。良い演技をして注目されたいという思いも当然持ちながら、上位になって始終人の目を感じるようになると、そっとしておいてほしいという思いも芽生えてくる。愉しんで跳んでいるという自分の気持ちとは別の思惑に、無理やりはめ込まれる理不尽さも、仕方がないとはいえ、どうしようもなく応えたりもする。トップを争う現役時代を過ぎたとき、五人がやっとそれぞれ自分にとってのトランポリンを見つけられたように思えて、もどかしいようなほっとするような複雑な思いにとらわれたりもする。五人それぞれのキャラクタがとても清々しい一冊である。

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