もういっかい彼女*松久淳

  • 2016/10/17(月) 17:07:36

もういっかい彼女
もういっかい彼女
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松久 淳
小学館
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大人切ないタイムスリップ号泣ストーリー

私は、何度か過去に戻ったことがある--。雑誌のインタビューで出会った初老の官能小説家が話し始めた内容は、想像を絶するものだった。
これは、夢か、現実か、それとも彼の戯言なのか?

雑誌のライター・富谷啓太(通称・タニケー)は、自分が担当する「オールド・タレント」というインタビュー連載に、なんとなく訳ありのある人物を取材するよう依頼される。取材相手は、佐々田順という官能小説家で、20年前に9作の小説を世に出した後は、すっかり鳴りを潜めていた。
カメラマンの野田奈々と、その初老男性の取材を終えたタニケーは、ひょんなことから佐々田のとんでもなく長い話を聞くことになる。


雑誌のインタビューで、老作家・佐々田が亡き恋人・菜津子との過去のことを語る物語、かと思ったら大違い。過去のことを語ってはいるのだが、それは現在の佐々田が若き日の自分の元に帰り――どうやら若い佐々田には老佐々田の声だけしか聞こえないらしい――、子どものころから自分と出会うまでの菜津子の姿を見守る様子なのだった。老佐々田と若い佐々田、二人の目を通してみた菜津子の成長は、いつしか少しずつ違って映るようになっていったのかもしれない。話を聴く記者の啓太とカメラマンの奈々の興味と読者の興味とがするりと連動し、タイムトリップという不思議なことも自然に受け入れてしまう。老佐々田の死の後明らかになった事実は、その不思議さのさらに上をいくものだったが、啓太と奈々の想像通りだといいなと思わされる。悲しく切ないが胸があたたかくなる一冊である。

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