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いまさら翼といわれても*米澤穂信

  • 2017/01/25(水) 17:05:38

いまさら翼といわれても
米澤 穂信
KADOKAWA (2016-11-30)
売り上げランキング: 530

累計205万部突破の〈古典部〉シリーズ最新作!
誰もが「大人」になるため、挑まなければいけない謎がある――『満願』『王とサーカス』の著者による、不動のベスト青春ミステリ!

神山市が主催する合唱祭の本番前、ソロパートを任されている千反田えるが行方不明になってしまった。
夏休み前のえるの様子、伊原摩耶花と福部里志の調査と証言、課題曲、ある人物がついた嘘――折木奉太郎が導き出し、ひとりで向かったえるの居場所は。そして、彼女の真意とは?(表題作)

時間は進む、わかっているはずなのに。
奉太郎、える、里志、摩耶花――〈古典部〉4人の過去と未来が明らかになる、瑞々しくもビターな全6篇。


表題作のほか、「箱の中の欠落」 「鏡には映らない」「連峰は晴れているか」 「わたしたちの伝説の一冊」 「長い休日」

相変わらず、やらなくていいことはやらないというモットー通りに生きている折木奉太郎ではあるが、今作では、そうなった理由も明かされ、熱を帯びた彼の姿も時折見ることができて、大人になっていることを思わされもする。それぞれの章で謎の中心にいる人物は、それぞれにその世代なりの大変な思いを抱えていることは確かなのだが、人が死なないというのはこんなにも安らかに読み進められるのかと、改めてほっとさせられる。生きているといろんな壁にぶつかり、これほど高い壁はほかにはないと思い込んでしまいがちだが、大抵のことは振り返れば乗り越えられているのだと思う。彼らもひとつずつ壁を乗り越えて大人になっていくのだろうと、感慨深く読んだ。彼らの関係が変わらずに在ってほしいと思う反面、少しずつ変わっていくのだろうなと思わずにはいられない一冊である。

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