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十二人の死にたい子どもたち*冲方丁

  • 2017/02/15(水) 16:54:33

十二人の死にたい子どもたち
冲方 丁
文藝春秋
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廃業した病院にやってくる、十二人の子どもたち。建物に入り、金庫をあけると、中には1から12までの数字が並べられている。この場へ集う十二人は、一人ずつこの数字を手にとり、「集いの場」へおもむく決まりだった。
初対面同士の子どもたちの目的は、みなで安楽死をすること。十二人が集まり、すんなり「実行」できるはずだった。しかし、「集いの場」に用意されていたベッドには、すでに一人の少年が横たわっていた――。
彼は一体誰なのか。自殺か、他殺か。このまま「実行」してもよいのか。この集いの原則「全員一致」にのっとり、子どもたちは多数決を取る。不測の事態を前に、議論し、互いを観察し、状況から謎を推理していく。彼らが辿り着く結論は。そして、この集いの本当の目的は――。

性格も価値観も育った環境も違う十二人がぶつけ合う、それぞれの死にたい理由。俊英・冲方丁が描く、思春期の煌めきと切なさが詰まった傑作。


集団自殺希望者を募るサイトを介して集まった十二人の少年少女が物語の主役である。先にひとりで実行した者がいるという予想しなかったアクシデントから、話し合いが始まり、さまざまな事情でこの場にいる十二人の抱えるものが次第に明らかにされていく中、それぞれの性格や役割が自ずと決まっていき、他人の反応を利用しようとする者、自己主張を始める者、話についていけずに頓珍漢な言葉を発する者、とそれぞれ違った行動を見せる。サイトの主催者のサトシは、14歳ながら終始中立を保ち、場の流れには口出ししない。そんな中で、状況が整理され、手掛りが集められ、行動が時系列で整理され、真実が明らかにされていく。廃病院に入って数時間の間に、十二人に起きた気持ちの変化は、誘導されたものではないのだが、集団心理がプラスに働いたような印象もある。サイト管理者であるサトシの本心もそれに微妙に影響を与えているのかもしれない。心のキャパシティの差とか、閉塞感とか、さまざま考えさせられる一冊でもあった。

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