慈雨*柚木裕子

  • 2017/02/26(日) 06:59:51

慈雨
慈雨
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柚月 裕子
集英社
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警察官を定年退職した神場智則は、妻の香代子とお遍路の旅に出た。42年の警察官人生を振り返る旅の途中で、神場は幼女殺害事件の発生を知り、動揺する。16年前、自らも捜査に加わり、犯人逮捕に至った事件と酷似していたのだ。神場の心に深い傷と悔恨を残した、あの事件に――。
かつての部下を通して捜査に関わり始めた神場は、消せない過去と向き合い始める。組織への忠誠、正義への信念……様々な思いの狭間で葛藤する元警察官が真実を追う、日本推理作家協会賞受賞作家渾身の長編ミステリー!


定年退職したばかりの元刑事・神場智則が、遍路の旅で、これまで関わってきた事件と、それにまつわる様々な思いを見つめ直す物語なのだが、そればかりではなく、同行している妻や家族との来し方行く末を見つめる物語でもあり、趣き深い。一方、現実には過去に悔いを残す幼女殺害事件と酷似した事件が起きており、部下の刑事と連絡を取りつつ、捜査に協力してもいる。そしてそれは、とりもなおさず、過去の悔恨を暴き出すことでもあり、葛藤もあるのである。登場人物それぞれがそれぞれに誰かを思い、苦悩し、それでも深く信頼する姿に胸を打たれる。ただ、冤罪を疑われている服役囚に神場の思いが通じるとは思えず、それがいささかやり切れなくもある。静かな中にも心をざわめかせる一冊である。

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