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蜜蜂と遠雷*恩田陸

  • 2017/03/03(金) 16:46:28

蜜蜂と遠雷
蜜蜂と遠雷
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恩田 陸
幻冬舎 (2016-09-23)
売り上げランキング: 61

俺はまだ、神に愛されているだろうか?

ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った青春群像小説。

著者渾身、文句なしの最高傑作!

3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。「ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」ジンクスがあり近年、覇者である新たな才能の出現は音楽界の事件となっていた。養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たない少年・風間塵15歳。かつて天才少女として国内外のジュニアコンクールを制覇しCDデビューもしながら13歳のときの母の突然の死去以来、長らくピアノが弾けなかった栄伝亜夜20歳。音大出身だが今は楽器店勤務のサラリーマンでコンクール年齢制限ギリギリの高島明石28歳。完璧な演奏技術と音楽性で優勝候補と目される名門ジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。彼ら以外にも数多の天才たちが繰り広げる競争という名の自らとの闘い。第1次から3次予選そして本選を勝ち抜き優勝するのは誰なのか?


初めは、音楽を文字だけで表現できるものだろうか、と訝しい気持ち半分でいたのだが、読み進むうちに、まったくの杞憂であることが判り、しかも、風間塵の、栄伝亜夜の、マサルの音を、世界を早く聴きたい気持ちに心が逸る自分がいることに気づかされるのである。彼らが思い描く風景に惹きこまれ、その場で一緒に同じものを見ているかのような昂揚感に包まれ、しばしば涙が止まらなくなる。そして、舞台に上がっていないときの彼らのその年齢らしい瑞々しい部分と、音楽家としての成熟した部分とのギャップに驚かされもするのである。コンテスタントひとりひとりの、まったく違うそれぞれの緊張感と昂揚感、そして幸福感が伝わってくる一冊である。

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