八月は冷たい城*恩田陸

  • 2017/03/14(火) 18:30:20

八月は冷たい城 (ミステリーランド)
恩田 陸 酒井 駒子
講談社
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夏流城(かなしろ)での林間学校に初めて参加する光彦(てるひこ)。毎年子どもたちが城に行かされる理由を知ってはいたが、「大人は真実を隠しているのではないか」という疑惑を拭えずにいた。ともに城を訪れたのは、二年ぶりに再会した幼馴染みの卓也(たくや)、大柄でおっとりと話す耕介(こうすけ)、唯一、かつて城を訪れたことがある勝ち気な幸正(ゆきまさ)だ。到着した彼らを迎えたのは、カウンターに並んだ、首から折られた四つのひまわりの花だった。少年たちの人数と同じ数――不穏な空気が漂うなか、三回鐘が鳴るのを聞きお地蔵様のもとへ向かった光彦は、茂みの奥に鎌を持って立つ誰かの影を目撃する。閉ざされた城で、互いに疑心暗鬼をつのらせる卑劣な事件が続き……? 彼らは夏の城から無事に帰還できるのか。短くせつない「夏」が終わる。


「七月」は女子編、「八月」は男子編、といったところである。男子たちは夏の林間学校の意味をすでに知っていて、ひとりは一度経験もしている。だが、無条件に聞かされている理由を信じているわけではなく、裏に何かあるのでは、という疑問も抱いているのである。加えて、もちろん親の死に向き合うという一大事でもあるので、身構えてしまうのも無理はない。彼らは、この林間学校で、かけがえのないものを失いながらも、何かを悟り、ひとつ大人になったように思われる。それにしても酷な制度だと思わずにはいられない一冊である。

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