透明人間は204号室の夢を見る*奥田亜希子

  • 2017/03/31(金) 09:16:04

透明人間は204号室の夢を見る
奥田 亜希子
集英社
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暗くて地味、コミュニケーション能力皆無の実緒。奇妙な片思いの先にあるのは破滅か、孤独か、それとも青春か。
今までにない感情を抱くことで、新たな作品を生み出す女性作家のグレーな成長小説。


コミュニケーション能力に欠ける実緒は、小説で新人賞を取ったことがあるが、それ以来書けなくなり、雑誌のライターの仕事が時折まいこむだけで、アルバイトをして生活している。自分の小説のタイトルで検索をかけるのが日課で、毎日何も変わらない検索結果にも心を動かされなくなっているこのごろだが、ある日、書店の自著を手に取る青年を見つけ、こっそり後をつけて自宅を探り当てる。それからの実緒は、ほとばしるように綴った短い物語を彼のポストに入れるようになり、自身が透明人間になって、彼の日々を眺めるのが生きがいのようになっていく。その果てに繰り広げられる日々は、果たして現実だったのか、それとも実緒の妄想だったのか。人間の裏側を覗き見るようなおぞましさと、人との関わり方を知らない故の切なさがないまぜになって、何とも言えないやりきれなさに包まれる一冊である。

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