かわうそ掘り怪談見習い*柴崎友香

  • 2017/04/02(日) 18:28:52

かわうそ堀怪談見習い (角川書店単行本)
KADOKAWA / 角川書店 (2017-02-25)
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わたしは「恋愛小説家」と肩書きにあるのを見て、今のような小説を書くのをやめようと思った。恋愛というものにそんなに興味がなかったことに気づいたのだ。そして、怪談を書くことにした。郷里の街のかわうそ堀に引っ越したが、わたしは幽霊は見えないし、怪奇現象に遭遇したこともない。取材が必要だ、と思い立ち、中学時代の同級生たまみに連絡をとった。たまみに再会してから、わたしの日常が少しずつ、歪みはじめる。行方不明になった読みかけの本、暗闇から見つめる蜘蛛、留守番電話に残された声……。そして、わたしはある記憶を徐々に思い出し……。芥川賞作家・柴崎友香が「誰かが不在の場所」を見つめつつ、怖いものを詰め込んだ怪談集。


成り行きで恋愛小説家と呼ばれるようになった女性作家・谷崎友希が主人公である。恋愛とは縁があるとは言えないので、怪談作家になろうと、怖い話を集めることにした。中学の同級生のたまみに話を聴いたり、たまみの紹介で酒屋の四代目に古地図を借りたりするのである。不思議で怖いことは案外身近なところに潜んでいて、怪談とは縁が薄いと思っている友希自身、実は普段から現実世界の隙間に入り込んでいるようにも見えるのが、いちばん不思議で怖い。突き詰めてしまえばなんということもないのかもしれないことが、中途半端に見たり聞いたりすることで、いくらでも恐ろしくなるのかもしれないとも思う一冊である。

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