老乱*久坂部羊

  • 2017/05/22(月) 07:17:01

老乱
老乱
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久坂部羊
朝日新聞出版
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在宅医療を知る医師でもある著者が描く迫力満点の認知症小説。
老い衰える不安をかかえる老人、
介護の負担でつぶれそうな家族、
二つの視点から、やっと見えてきた親と子の幸せとは?
現実とリンクした情報満載の新しい認知症介護の物語。

医師、家族、認知症の本人の
それぞれの切実な“不都合な"真実を追いながら、
最後にはひと筋の明るいあたたかさのある感動の長篇小説。

著者は再発したがん患者と万策尽きた医師との深い葛藤をえがいた『悪医』で日本医療小説大賞を受賞している。


介護する立場で書かれたものは多く出回っているように思うが、介護される側の胸の裡の苦悩までリアルに描き出したものは珍しい気がする。歳を重ね、少しずつ自身でも老いを感じ始め、覚束なさや不甲斐なさ、情けなさを実感している舅と、別居してはいるが、ときどき舅の様子を見に通う嫁が、その都度感じる異変と先行きの不安、自分たちの生活が脅かされるかもしれないという漠然とした恐怖心、目の当たりにしていない夫の反応に対するもどかしさなどが、とても丁寧に描かれていて、現場をリアルに想像させられる。医療や福祉の現場の実態にも筆は及び、ほんの一端ではあろうが、その頼りなさが浮き彫りにされている。実態は、本作に描かれている以上に心身ともに苦労の多いことと思うが、老いていく者自身の覚悟と、それを支える者たちの覚悟を思い知らされる一冊でもある。

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ご無沙汰です
現役医師による作家活動は昔からいろいろあり、どれもテイストが違って好きです
南木佳士さん、帚木蓬生さん、ベストセラー作家の海堂尊さん
医学に一石を投じるという意味では、久坂部さんは海堂さんに引けを取っていないと思っています
この作品も、皮肉が身上の著者らしい、いい一冊でした
先日読んだ「カラダはすごい! モーツァルトとレクター博士の医学講座」も
ミステリではあのませんが、医学入門書としておススメです

  • 投稿者: チョロ
  • 2017/05/23(火) 14:26:10
  • [編集]

ご紹介の本、面白そうですね。
機会があったら読んでみます。

現役医師作家さんの作品は、面白いけれど、怖くもありますね。
現実問題としてとらえると、面白がってばかりはいられません。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2017/05/23(火) 16:20:30
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