ドクター・デスの遺産*中山七里

  • 2017/08/02(水) 18:31:45

ドクター・デスの遺産
中山 七里
KADOKAWA (2017-05-31)
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警視庁にひとりの少年から「悪いお医者さんがうちに来てお父さんを殺した」との通報が入る。当初はいたずら電話かと思われたが、捜査一課の高千穂明日香は少年の声からその真剣さを感じ取り、犬養隼人刑事とともに少年の自宅を訪ねる。すると、少年の父親の通夜が行われていた。少年に事情を聞くと、見知らぬ医者と思われる男がやってきて父親に注射を打ったという。日本では認められていない安楽死を請け負う医師の存在が浮上するが、少年の母親はそれを断固否定した。次第に少年と母親の発言の食い違いが明らかになる。そんななか、同じような第二の事件が起こる――。


人間の尊厳と安楽死について、最期をどう迎えるかということについて、いくら考えても何が最善なのかわわからない。だが、安楽死という選択について、深く考えるきっかけになる物語である。少年の通報によって動き出した捜査一課は、安楽死を請け負うサイトにたどり着き、かつて、積極的安楽死を推奨した病理学者、ジャック・ケヴォーキアンの意志を受け継ぐそのサイトの管理者を、一連の安楽死事件の真犯人と読み、ケヴォーキアンがそう呼ばれたのにちなんで、ドクター・デスと呼んで捜査を始める。ドクター・デスは、見事なほど印象が薄い男で、頭が薄い小男という証言しか得られず、容易に迫ることができない。そんな折、共に行動していた看護師を見つけ出し、彼女の証言によってドクター・デスの名前が判り、それを糸口にして真犯人を逮捕するところまで行くのである。だが、そのあとの展開は、全く想像の外だったので驚くしかなかった。なるほどそういうことだったのか。安楽死はもちろん、現在の日本では違法であり、実行すれば殺人罪に問われるものである。自分自身も難病に苦しむわけでもなく、身近に病人を抱えるわけでもないので、法を犯してまで安楽死を望もうとは思わないが、実際に当事者になったときにどうなるか、確固として安楽死の誘惑を退けられるかどうか、いささか自信が持てないのも確かである。超高齢化社会目前のわが国において、なにが最善なのか、真剣に考えなければならないと思わされる一冊である。

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